私のうつ最短回復ストーリー
【体験談】My Story
vol.61
6/2
UP

深田恭子さん、大坂なおみさんの報道に思うこと

女優の深田恭子さんが適応障害であり、しばらく芸能活動をお休みするとのこと。

情報番組では、「適応障害とは、強いストレスが原因で引き起こされるもので、責任感の強い人がなりやすいのだ」と解説していました。

「経験者」としては、確かにそうだ、と思います。(ちなみに、「適応障害」「うつ状態」「うつ病」とも医学的な診断のことで、エネルギーの枯渇状態という意味で基本的には同じ、と私は考えています)

エネルギーがどんどん消耗していく中で、「私、このままではやばいかも」といち早く気づいて、全力でストレスから逃げられたら、深刻な事態を避けられたでしょう。

けれども同時に、一つだけ、言及しておきたいことがあります。

うつ状態になると、「何もかも放り出して全力で逃げる」ことも、本人にとってはまた大変なストレスになることがある、ということ。

その背景には、2つのことがあります。

1つ目。例えば、仕事がストレスの場合。はたから見れば「仕事がストレスなんだから、休めばいい」と思いますし、それは真理です。

でも、その時点で、本人から「仕事」を取り上げることは、かろうじて心身を支えている、細い杖を取り上げるようなものになります。

なぜなら、仕事で忙しくしている間は、漠然と迫ってくる「不安」から、ほんの少し目をそらすことが出来る。「それでも、なんとか自分はやれている」という事実が、崩壊寸前の自分をわずかに支え、ふるい立たせてくれているのです。

2つ目。「責任感の強さ」は、本人の性格というよりも、小さい時から刷り込まれた価値観に寄るところが大きいこと。

「責任感の強さ」を100%本人の気質とされてしまうと、うつ状態のつらさは、本人が招いたことになります。渦中にある時は「それでは、私が悪かったのか」と、責められているように感じてしまうのです。

でも、考えてみてください。私たちは普段、あまり意識していないのですが、「仕事は一生懸命やる」「物事は最後までやり遂げる」「他人に迷惑をかけてはいけない」という価値観を、思っている以上に、かなり根強く持っています。

試しに、「仕事をいつも怠けている人、途中で簡単に放り投げる人、メンバーに迷惑をかけてばかりいる人……こんな人が自分の職場にいたら?」と想像してみてください。私たちは、そういう人たちを「ありえない!」と批判したり、怒ったりするのではないでしょうか。

「責任感を持つ」ことで、人間社会はやってこれたし、今なおそれで成り立っています。暗黙の了解で疑ってもみないこと、それが「価値観」です。

その無意識の「価値観」の中、「何もかも放り出して全力で逃げる」など、大変なエネルギーがいる。すでに心身はボロボロ、メンタルも過敏になっています。これまでの自分を疑うのもつらいし、社会や仲間から外れるのも怖くてたまらない、いろいろな感情が湧いてくるでしょう。

では、ひとたび「うつ状態」に陥って、つらい立場にある人に対して、周囲はどうサポートしたらいいでしょうか。

それは「ひたすら励まして、励まして、励ます」こと。「どんな状態にあっても、あなたはあなた。私は味方する」と、「安心感」を、言葉で、態度で、雰囲気で、届けてあげてください。本人のあらゆる気持ち、感情のさざ波も、ひたすら聞いてあげて、受け止めるだけで「安心感」になります。

(*6/5追記  「ひたすら励まして、励まして、励ます」→ 「頑張れ」などの声をかける、という意味ではありません。「ひたすら”味方”として存在に寄りそう」というイメージです。足を骨折をした人に「頑張って立ち上げれ」とは言わないのと同じですね。分かりにくい表現だったようで失礼しました!)

深田恭子さんのニュースのあと、テニス選手の大坂なおみさんのうつ病告白の報道がありました。

トーナメントを棄権し、しばらくコートを離れるという大坂選手に対して、「プロとして甘い」という言葉も一部あるそうです。

しかし、私は「プロだから、プロとして、甘えるのだ」と感じています。

今、2年に及ぼうとするコロナ禍で、私たちはほぼ全員、潜在的な疲労を抱えています。少しの負荷で、たちまち心を折ってしまう可能性が切迫しています。

これまでの「こうあるべき」という価値観と、「心の健康」とのバランスが、揺らぎ始めた転換点にきているのでしょう。疑ってもみなかった「こうあるべき」に光を当て、ブラッシュアップするチャンス到来、とも言えるかもしれません。

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