私のうつ最短回復ストーリー
【体験談】My Story
vol.27
12/11
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【うつ予防の小さなヒント】心のアキレスけんはあるけれど…

先日、個人的にお話をうかがった40代の女性のケースです(ここでは「Aさん」とさせていただきます)。

Aさんは、とある業界で、第一線でずっと活躍されてきた方。

けれども、今年に入ってから急にこれまでと同じペースでは働けなくなり、悩んでいた矢先に、たまたま共通の友人を介してこのサイトを知り、それがご縁で、お会いすることになりました。

Aさんが経験された、この1年の体調、心の変化。

私自身の体験とも重なり、「あるある!」と大きくうなずきながら共感しあう、密度の濃い時間に。そして、Aさんとお話ししながら、私は、あることに思いがいたりました。

それは「優秀な人ほど、不調の原因をはっきり求めたがるのではないか」ということ。

仕事にトラブルはつきものです。業務上のトラブルは速やかに原因を突き止めて、スピーディーに対処を行う。それこそが社会人に求められる一つのスキルであり、その能力が高い人ほど“仕事が出来る人”の評価も高くなります。

けれども、残念ながらメンタル不調に陥った場合は、そのスキルは仇(あだ)になってしまう。心身の疲労は、時間をかけて回復させるしかない。ですが、その間は苦しいので、どうしても「何がいけなかったのか」「早く対処したい」と考えてしまいがちです。

すると、自分の中で「不調の原因調査委員会」が立ち上がって、あれこれ究明が始まる。こうなると、職場のことや親との関係、失恋や失敗の経験など、さまざまな出来事が「検索ヒット」してしまうのです。

Aさんの場合は、それが「子どもを持たなかったこと」でした。

「まあ、いろいな事情が重なったので、夫も私も納得はしているんですよ。でも、今ここに来て、これだけ疲れてしまうと、もしかしたら、一度も育休を取らずに、ずっと働き続けちゃったから、不調になっちゃったのかなって思うんです。1年でも仕事から離れられたらちょっと違っていたかも、子どもがいたらもう少し違った生活になっていたかも、って」

わりと淡々と語っていたAさんでしたが、ふっと苦しい表情を見せました。

「仲の良かった後輩が、育休を取って復帰した時に言ったんです。“子どもを持って世界が変わった。今までの自分はなんだったのかと思う”って。その子は何気なく、正直に言っただけだと頭ではわかっているんだけど、グサッと来てしまって…。その晩は一人、わんわん泣いてしまったの」

そう語る、Aさんの目には涙が浮かんでいました。

結婚、仕事、家事、出産、育児、介護。特に女性にとって、運命的に翻弄される要素は多いもの。ひと昔前よりも価値観が多様化した良い面もあるのですが、そのぶん個人レベルでの迷いや葛藤が増えています。しかも、テレビやSNSでは、「キラキラした女性」情報があふれ出てくる。まるで、それが「正解」のように。

あ、今ここで、社会分析をしたいわけでも、女性の生き方を問いたいわけでもありません。

ただ、うつっぽいときは、こうした情報からは離れて、ひとまず休んだ方がいいみたいですよ、ということだけ、お伝えしたいのです。

「不調の原因調査委員会」は、ひとまず解散しましょう。人生を考えるのは、とにかく休んだ後で。

Aさんと同じように、私にも“それを言われるとフリーズしてしまう”、心の「アキレスけん」があります。きっと多かれ少なかれ、誰のなかにも、そういう痛みはあるのでしょう。

でも確実に言えることは、同じ苦しみでも、うつっぽいときと、そうでないときは、まるでとらえ方が違う、ということ。

うつ状態の時は、人の言葉が、ナイフのように突き刺さる。でも今だったら、同じ言葉が、蚊に食われたくらいの痛みです(←ちょっと言い過ぎ、調子良すぎるか?!)。

でも、経験上、本当に違います。もしかしたら「悩みは、疲れていたから悩みだったのかも」と考えることもあります。

 

どうか、今何かに悩んで、苦しい思いをしている方へ。

今日1日、1時間だけでも、悩みの対処はひとまずおいて、心と体を休めてみませんか。

さらに。

結果“休めなかった”としても、それでまた悩まないでください。

休めなかった自分もオッケーにしちゃう、それがきっと「自分を休む」ことになります。

さらにさらに。

どうしても自分にオッケーが出せないとき。

心の中がどんなにひどい嵐でも、ひとまず「大丈夫」と声を発してみてください。気持ちがどんなに抵抗しても、口だけは「ダイジョウブ」と動かしてみる。

効果があるかって? さあ、それはわかりません。

でも、言葉だけでも、自分で自分を許してあげられたら…。きっと、心は一瞬でも休まると思います。

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