私のうつ最短回復ストーリー
【体験談】My Story
vol.18
12/26
UP

それでも「飛行は順調です」

いつもカウンセリングのあとは、何かしら希望が見えて、前向きな気持ちになります。ところが、今回ばかりは、重苦しさから脱出しそこなってしまいました。

耳の調子は相変わらず悪く、なぜか目をつむると、右耳の奥に「ジジジジ」ときしむような音。そんな怪奇現象(?)が現れるように。いささか自分でも神経質すぎるようで、首を振ったり、耳に手を当ててみたり、なるべく気にしないように努めました。でも目を閉じると「ジジジジ…」。明らかに耳の中に音があるのです。耳鼻科に行っても「疲れているのだから、休みなさい」といつもの薬を処方されるだけだろうと思うと、足が向きませんでした。「どうしたらいいの?」。再び途方に暮れてしまいました。また、あのイヤ〜な感じの背中のだるさも出てきています。

「調子の波は想定内。私は治っているから大丈夫」。何度も自分に言い聞かせながら過ごす日々。でも何かおかしい。先生はまた波は上がる、と言っていたのに。ちっとも浮上しない…。

そんななか、元いた職場のメンバーが、延期になっていた私の送別会を開いてくれました。会自体は、とても楽しい時間に。心がこもった贈り物やメッセージをもらい、温かな励ましを感じることができました。けれども、次の日から、また気持ちがガクンと落ちたのです。今度は寂しいというよりも、悲しい。治らない自分が情けなく、涙が出て止まらなくなってしまいました。

 

こんなときは、すかさず「緊急メール」発信です。

私/

前回カウンセリングから1週間。今回ばかりは全く調子が浮上しません。いつもはカウンセリングの後はなんとなく希望が出てきて元気になれるのに、落ちっぱなしです。元気な時のレベルを10としたら、1〜2をさまよっている感じです。一つには右耳の違和感。眠ろうとするとジンジンとします(背中のだるさは2〜3日続いた後、取れました)。もう一つは送別会。とても楽しく、温かな会でした。久しぶりに気分が高揚し「私はやっぱり人と一緒にいる方が元気になれるな〜」と思ったのですが、帰ってきたら、悲しくて仕方なくなってしまいました。もの悲しくて泣けてしまうことが何回か(今もこれを書きながら涙が出てしまいます)。前回のカウンセリングで3月上旬を起点に、波が浮上するイメージでしたので、落ちっぱなしであることがショックです。今の気持ちは、何もかも投げやりで、書きながら、ネガティブな自分が嫌です。本当に、私、治りますか? 前回治る見込みについて「4月」から「初夏」とおっしゃっていましたが、実際のところ、治るスピードが落ちていませんか? 今一度、心と体を立て直したいと思います。改めて私は今何をしたら良いか教えてください。

 

泣きながらそこまで一気に書き上げて、鼻をすすりながら、ポチッとメール送信。ティッシュで鼻をかんで、ふと我にかえりました。

メールで気持ちを吐き出したら、急に落ち着いてきた自分がいるのです。

「うわわ! ちょっと今、感情的すぎるメール送っちゃったんじゃない?!」

私はあわてて、次のメールを送信しました。

 

私/

…と、先ほどのメールを送信したら、スッキリしてきました。大丈夫です! 先生の著書にあった「良いところ探し」(下園先生考案の心のエクササイズ)を少し取り組んでみます。

 

ほどなく、下園先生から長い長いメールが届きました。

下園先生/

不安発作ですね。ワーッと不安になってしまう。うつの時はどうしても不安が強くて、発作のように思考が悪循環することがよくありますよね。でも、メールをすることで、冷静になれたのですね。メールで人とつながれた、書くことで冷静になった、2つの効果です。素晴らしい対処です。

さて、今回の波は、まだまだ僕の予想の範囲です。ですから、治りが遅くなることもありません。航空機に初めて乗る人は、飛行機が少し揺れるだけで、怖いもの。ましてやエアーポケットにでも入ろうものなら、まさにパニックになる。でも、何度も経験しているクルーは、「大丈夫です、飛行に影響はありませんから」と答えてくれます。向山さんの飛行は、順調過ぎたのかもしれません。時には雲がかかることもあるのです。でも、嵐ではないので安心してください。

ちなみに、「元気な時のレベルを10としたら、1〜2をさまよっている感じです」を少し客観的に評価しなおしてみましょう。向山さんの1か2レベルとは、Aさんとトラブルになったあの頃ですよ。トイレで嗚咽したあのころ。去年の夏頃でしたっけ。それと比べたら、今はやはりかなり上なのではないでしょうか。耳の違和感は、向山さんの特別な症状です。(珍しいというわけではありません、大切なという意味です)。特別な症状は、一番敏感に危険を察知して、宿主に教えてくれる症状です。悪夢と同じように、いよいよ現実に復帰するときに、「今のままの体力で大丈夫?今のままの生き方で大丈夫?」と自分にブレーキをかけてくれるのが、苦痛を伴う特別な症状。それがあれば、まだしっかり休んでいるでしょう。少し世話を焼きすぎですが…。

おそらく、送別会で気分が高揚し、心の中に、少しの焦りが出てきたのだと思います。みんなに遅れている、戻りたいけど戻れないという悲しさ。その時が楽しければ楽しいほど、落ち込みが来るものです。僕たちは、「祭りの後の寂しさ」と呼んでいます。これも、この時期によくある現象です。少し焦りが出始めた向山さんを、耳の違和感が必死に止めてくれているのです。耳の焦り的には、「焦らないで! またあの頃(会社で仕事に没頭していた)の状態に戻ろうと思わないで!」と訴えているのではないでしょうか。どうか、その違和感を邪険にせず、「ありがとうね、君の言いたいことはよく理解しているよ」と伝えてあげてください。この時期の不安は、子供時代のトラウマなどと向き合う必要がない場合、つまり向山さんの場合、一過性です。刺激を徐々に増やしていくとはいえ、ダメージは元気な時の2倍。だから2倍の休養を予定しておいてください。エネルギーが低下してくると、どうしても不安や「投げやり感」が出やすくなります。「良いところ探し」は良いエクササイズですが、不安が強いときは、どうもいいところが見つからないもの。自信を失う結果に終わることがある。そんな時は、無理してやらなくても結構です。それより、何か、落ち着くものを見つけ、そのいい感じをじっくり味わうことを試みてください。焦るのも大切。ありがたい、不安も大切、ありがたい。耳の違和感も大切、ありがたい。そして、そんな中でも、例えば、お茶がおいしいとか、文章が書けたとか、連絡をもらったなど、小さなことの幸せ感を、しっかり味わい、世の中は、焦りや不安が思うほど危険なものではないということを、体に伝えてください。今は、自分に厳しくせず、おいしいもの、ゆったりしたもの、甘いもの、楽なものを探してください。自分を甘やかしていいタイミングですよ。

 

こんなに調子が悪いのに、やっぱり”順調飛行”。にわかには信じられず、しばらくボーッとしてしまいました。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る