私のうつ最短回復ストーリー
【体験談】My Story
vol.17
12/19
UP

嫌な夢は”吉兆”

3月、5回目のカウンセリング。

どよーんとした私と対照的に、下園先生は「昨日はテニスだったんだよ」と、日焼けした笑顔で現れました。Sさんも一緒に、この日は、今回の落ち込みをかなり緻密に分析してくれました。

まず、うつ状態の回復は調子の「波」であることの再確認。エネルギーの波が落ちるので、本人としては「うつ状態に逆もどりした」と勘違いしてしまいがち。でも今回が発症時と明らかに違うのは、体の調子はそれほど落ちていないこと。休みながら、自然に波は上がっていくのです。…とは、これまでも何度も受けていた説明。ですが、まるで初めて聞いたかのように、私には入ってきました。「そうはいっても、今度ばかりは非常事態なのではないか。下園先生とSさんの想定を超えたのではないか」と、疑念でいっぱいだったのです。

さらに、事前に提出したこの1カ月の経緯メモを見ながら細かく分析。すると、この1カ月に、実は3つのことが起きていました。

一つ目は、ランチやメールなどで、前の職場の人と接触した後に感じた、気持ちの”ザワザワ”。すでに去った世界ですが、私には関係なく、会社は変わりなく活気づいている事実がありました。「社会は動いているけれど、私は一人、静かな生活をしている。死にゆく人はこんな気持ちなのかな」とまで考えて、寂しくてたまりませんでした。「仕方のないことだ」と理性では考えられます。それでも詰まるような想いが胸にありました。

二つ目は、再び不調に陥ったことによる「挫折感」。この半年、うつ状態になったことですでに自信を失っていました。が、そんな中でも最近はヨガなどをして、だいぶ体力気力も戻ってきたと実感していただけに、余計にガックリくるものがありました。

「うつ状態のハートは、2つのことに敏感なんですよ」と、メモ用紙にハートマークを描く下園先生。「一つは寂しさ。社会からのとり残され感はそこから来ています。もう一つは今までの苦労、努力、積み上げの否定感。元気なときに比べて、この2つを必要以上に感じてしまうんですね」。調子がいい、と本人は思いつつも、敏感で素直なハートは、これらの刺激をズキズキと受けていたわけです。それも「必要以上に」。

そして、三つ目はこのころ見ていた、嫌な夢、苦しい夢のこと。これはなんと、いわば”吉兆”でした。「この時期の嫌な夢は、うつ状態の当初の夢とはちょっと意味が違うんですよ。いよいよ治り始めている現象なんです。もうすぐうつが治ろうとしている。でも潜在意識が“本当に大丈夫?”“現実に戻るとまたいろんなことがあるよ”とお知らせしてくれているんです」

治り始めている?! 潜在意識がお知らせ?! がく然としました。つらかった、この2週間の落ち込みも、本当に回復に向かっている途上だったわけです。

とはいいつつ、調子が落ちるのは苦しいもの。治る“兆し”が遠ざかり、見えなくなるのが、何よりもこたえます。下園先生は落ち込んだときのコツとして、1日の作業量を決めること、人と会うときは2倍疲れることを想定して上手に過ごすこと、をアドバイスしてくれました。

こうして、「うまくいけばあと2回で終わる」と言われたうちの1回、5回目のカウンセリングは終了。大丈夫、私は治る過程にあるのだ…と、言い聞かせながら帰途に着きました。

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