私のうつ最短回復ストーリー
【体験談】My Story
vol.14
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UP

「話す」は「放す」

かなり調子が良くなってきた2月。ほんの少しずつ、これまで会っていなかった人たちとランチをしたり、夜に短時間、ちょっとした用事に出かけたりなども再開できるようになりました。

ですが、ここでまた新たな局面に出会うことに。ふとした瞬間に、ものすごく緊張してしまうのです。例えば、友人に退社の経緯を話し始めたとき。街の雑踏に足を踏み入れたとき。ふと、手がかすかに震えたり、冷や汗をかくほど緊張してしまうのです。「なんか私、大丈夫だろうか。この程度で緊張するなんて…」。せっかく治りつつあるのに、これまた自信をなくしてしまう場面でした。

2月。4回目のカウンセリングで、私はこの緊張について聞いてみました。

すると、下園先生は、次のように教えてくれました。「それだけ、うつ状態というのは、本人にとって”怖かった記憶”なんですよ。だから緊張するんです。でも大丈夫です。2つ対処法があって、一つはそのうち慣れる。もう一つは、話したり、文章に書いたりすることです。そうすることで、怖かった記憶を放すことができるんですよ」

「話す」は「放す」。

昔、原始人は、水のありかや獲物のいる場所などの情報を、仲間に伝えたり壁画にしたりしていました。それは、次の世代にも伝えて、種族として生きのびるため。「恐怖の記憶も、後世に“伝えること”で、種族の知恵になるんですよ」

ふと、オーストラリアのウルルを訪ねたときに見た、アボリジニの壁画がありありと思い出されました。「そうか。私も、この怖かった記憶を、少しでも早く手放そう」。私が経験を決して隠さずに、人にお話ししたり書いたりしているのは、実はこんな理由もあるのです。

また、この話を聞いたあとは、ふっと緊張してしまったときに「それだけ”怖かった記憶”だったからね。大丈夫、大丈夫」と、アボリジニの壁画のイメージとともに、自分を安心させるようにしていました。

あれから約10カ月。これを書いている今、このころ感じていた、独特の緊張感、恐怖感はすっかり影をひそめています。いつから感じなくなったのか、書いたり話したりが、どのくらい効果をもたらしたのかも、正直思い出せません。「そういえばないなあ…」というくらい、ノンキな感じです。

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