私のうつ最短回復ストーリー
【体験談】My Story
vol.24
10/23
UP

もう一つ、おまけ。下園壮太先生も村上春樹も同じことをしていた!という話

原稿をお手伝いした『人間関係の疲れをとる技術』(朝日新書)もおかげさまで、売れ行き好調とのこと。ホッと胸をなで下ろしているところですが、この仕事を通じて、「なるほどねー」と思うことがありましたので、ちょっと書いておきます。

原稿を書くという作業は、頭を使うし、エネルギーを使います。

私は、あれこれ言葉を紡ぐ作業は決して苦ではないのですが、それでも、新書1冊というこれまでにない量、内容を書くのは、なかなか調子が出せませんでした。

書き始めに1時間。書いて1時間。読み直して書き直して1時間。気づいたら3時間経っているのに、まだ1段落しか書けていないことも。

「ひゃー、私、ちゃんと書き終わるのか?」

最初はかなり焦りました。

打ち合わせで下園先生に会ったときに、その話をしたところ、先生はさらっと、こうおっしゃったのです。

「僕はね、原稿を書く時は、30分書いたらパソコンから離れて、10分テニスの素振りをするよ。その繰り返し。それも1日4時間以上はやらない。ぱっと辞めちゃう」

「そうなんですか!」

少しでも書き進めたいと、朝からパソコンに向かってウンウン悩み、ヘトヘトになって終了する日々を過ごしていた私。毎年著書を出版している先生が1日4時間以上書かない、しかも、休み休みで、というのは、かなり衝撃を受けました。

また、そのころ、たまたま趣味で読んでいた村上春樹のエッセイ『職業としての小説家』でも、こんなくだりがありました。

村上春樹さんは、長編小説を書く時は、一日に10枚程度を書くことを課している。もっと書きたくても10枚くらいでやめておくし、今日は乗らないなと思っても、10枚程度はとにかく書くようにしているそうです。

うーむ。思わずうなったのは、「もっと書きたくても10枚程度でやめておく」というところでした。

調子が良いときこそ、仕事を切り上げることは、なかなか勇気がいること。でも下園先生も村上春樹も同じことを語っているのですね。

我が身を振り返ると、編集部に勤めていたころもそうですが、朝仕事を始めたら、その日“疲れるまで”仕事をし続けてしまいます。逆に言うと、アドレナリンが出て調子が出てきたら、「しめた」とばかりに、仕事を続けてしまう。まあ、正直、そんな自分にちょっと酔う部分も多少あったかもしれません。

でも、今回、『人間関係の疲れをとる技術』の原稿を書きながら、改めて、疲労の仕組みを学び直すと、これまでの仕事のやり方は、うつ状態に“まっしぐら”だったんだなあ、と認めざるを得ませんでした。

疲労はある段階に達すると、体内システムとして、感覚を麻痺させてしまう。仕事に熱中してしまう感覚は、ときに快感を伴いますが、一方で麻痺状態でもあるので、あるときエネルギーが枯渇してパタッと折れてしまうわけです。

では、どうすればいいのか。そのヒントは下記の通りだそうです。

  • 疲れる前に休むこと
  • 最初から、計画に休みを組み込むこと

この二つは、体験談の中でも紹介しました。もう一つ、重要なヒントは、

  • 疲労管理は時間(目に見える指標)で測ること  (=“体”で測ってはいけない!)

なのです。

年齢を重ねると、残念ながら誰もがエネルギーの持ち分が低下してしまいます。少なくとも(一般的に)40歳を過ぎたら、これまでと同じ仕事の仕方ではダメなのです。と言って、そんなことは賢い人ならとっくに気づいているのでしょうが、イノシシのように猛進していた私は、スランプにぶち当たってはじめて、そんな事実に気づいたのでした(くう、そう書いていて、未熟な自分にツッコミを入れたくなりますが)。

余談ですが、建築関係の仕事をしている40代の友人は、こんな話をしてくれました。

「建築業界は、この10年のIT技術の進歩で、クライアントの要望に回答しなくてはいけないスピードがどんどん早まったの。技術上、すぐ修正できるから、クライアントも、以前より簡単に変更を言うようになった気がするんだよね。私自身も仕事の疲れ方が変わってきたと思う。周りは若い世代が多くて、それこそアドレナリン全開で働いているから、自分だけペースダウンすることも言い出しにくくて」

働き方改革で、社会の意識に変化の兆しもある。でも、その一方で、疲労を深めてしまう要素が増えてもいます。業界、職種もさまざまで、働き方のスタイルに正解はないけれど、特に、40代以上の人たちは、上手に自衛していく必要があるのですね。

さて、私の場合は、今回の書籍の仕事をするのにあたり、ひとまず「1時間原稿を書いたら、10分休む」にトライしてみました。

1時間ごとにパソコンの画面に表示が出るようにして、トイレに行ったり、お茶を飲んだり、外に出て小走りしてみたり。

原稿がノッてきたときに手を止めることは本当に難しかった!「え? もう1時間? うーん、もうちょっと」とブツブツ言いながら続けたりしました。

その後、書籍の仕事は無事に終わりましたが、今でもペース作りはなかなか難しいものがあり、まだまだ自分なりの「黄金ペース」を試行錯誤しているところです。

皆さんも、自分なりの「黄金ペース」、ありますか?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る