私のうつ最短回復ストーリー
【体験談】My Story
vol.11
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魔のお正月

12月、最終的な話し合いを経て、退社が正式決定。休職に入る前にほとんどの引き継ぎが終わっていたので、12月25日に荷物をとりにいって約15年の勤務は終わりました。

久しぶりに会う大勢の人たちとの挨拶、メール。一読ではわかりにくい事務手続き。胸によぎる退社の寂しさ。

怒涛の数日が過ぎて年の瀬が迫るころ、私はすっかり疲れ果ててしまいました。体が、しばらく忘れていた、あのイヤな重苦しい感じを訴えてきました。こたつに入ったまま、どうしても動けません。

「大好きな職場だったのに、どうして私が、こんな形で辞めなければいけなかったの」。突然、どうにもならない怒りがこみ上げてきました。ヒントを求めて、下園先生の書籍を開きます。が、がまんできなくなってバタンと閉じました。

「うつ」という言葉を見るのもイヤ。

「うつである」というこの状態もイヤ。

何もかもがイヤ! でも逃れられない…。

悲しくなってきて、涙がこぼれてきました。私は、初めて下園先生にメールをしました。何かあったらいつでもメールしてきてもいいですよ、といわれていたのです。その何かは、まさに、このときでした。

 

私/

先日はカウンセリングをありがとうございました。最終話し合いがあり、12月31日付の退社が正式に決定、25日に荷物を取りに行き、挨拶に回って退社しました。ドッといろいろな手続きが発生し(あまりに急だったため、年明けかなり持ち越しに…)、久しぶりに多くの人に会い、正直、大変疲れました。3日ほど体が動かない、あの「イヤな感じ」が戻ってきてしまい、暗たんたる思いに。昨日は8時過ぎに早々に寝て、今日からは少し抜けた感じです。下園先生やSさんなら何ておっしゃるかな? きっと「これがリハビリ期だよ」「本人がまた落ちたと思っても、段階は治っているから大丈夫」っておっしゃるだろうな…と必死に考えて、今やり過ごしております。本当に早く治りたいです・・・。

 

下園先生/

それは大変でしたね。リハビリ期の人が人に会うのは本当に大変なエネルギーを使うのです。向山さんの充電度は、おそらくまだ70~80パーセントです。それで、退職の様々な手続きや挨拶をこなしたのだから、よく頑張りました。避けて通れないことですものね。

通常、そのような「運命の波」でエネルギーを使うと、2倍モードで疲労が蓄積します。おそらく1週間ぐらいは、調子が悪くても仕方ないと思ってください。この間、お正月でいろいろペースが乱れるかもしれませんが、できるだけ今年の年末年始は、穏やかに過ごすといいと思います。そうすれば、また安心した生活に戻れますよ。

リハビリ期でも、上手にコントロールして過剰刺激が少ない生活では、今回のような「落ち込み」を経験することがないので、案外、自分は治ってしまったのか…と誤解して、早めに仕事を再開して失敗することがあります。ですから時々、今回のようにプチ落ち込みをするのは、あと数か月、しっかりリハビリ生活を続けるためには、必要なことかもしれません。いずれにしても、そんなに心配する出来事ではありませんよ。きっと、よい年を迎えられます。

 

私/

メールをお守りのように何度も読み返しました。少し泣き言めいたことになってしまいますが…、ときどき「うつ」であることに飽きてしまうんです。嫌気がさす、という言葉がぴったりなのですが、でも体が動かないので、無性に悲しくなってしまいます。また、あとこの状態が数カ月続くことに(一年ではなく数カ月であることにしみじみと感謝を持てるときもあるのですが)、「なんで私だけこんな目に」「私も働きたいのに」とやり場のない怒りを感じてしまうのです。そんなときは寝たり呼吸法を試したり、働いていない自分を自分で認めて受け入れる練習なのかも…と考え直したりしています。今はそんな日々です。気持ちを吐き出したくなり、長くなって大変失礼いたしました(気持ちのプチ大掃除です)。

 

下園先生/

うつの回復には、自分にはわからない段階があります。段階は進んでいるのですが、本人にとっては単なる苦しさの変化にしか感じられません。向山さんの考察のとおり、今の苦しみは、着実に回復している方向の「質」の変化です。通常回復は、不安や恐怖にブレーキをかける機能が回復してきます。セロトニンの活性化です。これで大きな不安や恐怖を感じることが少なくなります。

次に、不安や恐怖そのものが小さくなってきます。ノルアドレナリンの低下です。通常不眠も回復する時期です。この時期に、外界に対して「戦えるぞ」という無意識の気力も回復するので、怒りが強くなるのです。いま、向山さんはここです。

その後、これが少し長くかかるのですが、生きる喜びや興味が回復してきます。つまり、前向きに活動していいという体からのサインです。これはドーパミン系。うつであることに嫌気がさすというのは、なかなか思い通りにならない自分への「悲しさ」「怒り」でしょう。そんな思いとはしばらくお付き合いいただくことになるかもしれません。生きていることの意味をしっかり感じられるようになるのは、来年の初夏でしょう。ただ、もちろんそれまで何もしないほうが良いかというとそうではなく、少しずつ社会復帰のリハビリはしていきます。疲労度をコントロールしながら。

うつの回復は長い道のりですが、向山さんの今の段階は、骨折で例えれば、骨が付き始めた時期です。レントゲンで見たら、着実に良くなっています、というところです。もう少ししたら、ギブスが取れて、軽やかになります。お正月を無事に過ごせれば、2月の末には、そんな状態になれますよ。

 

このメールのやりとりで、私はようやく落ち着くことができました。体調は決して良いとはいえませんでしたが、お正月の旅行へ。家族だけスキーをしてもらって、私は部屋のなかでのんびり過ごすことにしました。また、いくつかの用事は、家族にも協力してもらって調整。うつ状態の人にとって”魔の時期”といわれるお正月を何とか乗り切りました(なぜ”魔”なのかというと、年末年始は人に会う機会も多く、ペースが乱されがちだから、だそうです)。

「リハビリ期は暗幕の百枚斬り。何度も落ち込みを体験します」と、説明を受けて、自分でも分かったつもりでいました。でもいざとなると、頭ではわかっていても、気持ちが落ちていくことを止められず、なんの助けにもなりません。結局救われたのは「大丈夫。回復の過程にある」というメール。「僕らカウンセラーは何度でも説明をします」。下園先生の言葉がよみがえりました。

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