私のうつ最短回復ストーリー
【体験談】My Story
vol.10
10/31
UP

暗幕の百枚斬り

「この1カ月は、自分は入院したと思って過ごして」。下園先生のアドバイスに従って、休職期間を過ごしました。

基本的には寝る。そのほかは家事をしたり、テレビを見たり、読書や散歩をしたり。ときにごく親しい友人とランチやお茶に出ることもありましたが、最初のころは、どれもすぐ疲れて続けることができませんでした。

それでも、日を重ねるごとに、復調の兆しが増えていきました。お昼寝をしないですむ。本を一冊、読み切れる。公園の入り口で終わっていた散歩が、公園の奥まで延びる。自分にしかわからないスピードでしたが、1カ月が経つころにはかなり元気になっていたのです。

2回目のカウンセリング。私は休養すべき時期を順調に過ぎ、「リハビリ期」に入ったことを告げられました。「前も説明したけど、ここからが、なかなか本人にとってはつらい時期なんです」と下園先生。「体力は回復したけれども、気持ちは相変わらずアップダウンを繰り返す。ときにダウン時のレベルが最悪のときまで落ちることがある。そのときにまた “うつ状態に戻った”と本人が感じてしまう。でもそれは逆戻りしたのではなく、あくまでも軽快する過程。そのことを、カウンセラーである僕らは何度でも説明します」

たしかに、体力回復の半面、気持ちの整理はなかなかつけられない状態。たまに不意打ちのように「このまま治らなかったらどうしよう」という不安や焦り、「どうして私がこんな目に」という悲しさやイライラが出てきて、よく葛藤していました。

「”暗幕の百枚斬り”って、僕は呼んでいるんだけど」と下園先生。「リハビリ期は斬っても斬ってもネガティブな感情が出てくる。でも斬って斬って斬りまくっていると、やがて終わるんですよ」とニッコリ。「はあ…」。時代劇みたいなんですけど…と、そっと心のなかでツッコミつつ、百枚も斬らなくてはいけないのか、先は長いな、とため息が出ました。

カウンセリングの最後に、休職後の身の振り方についても話し合いました。私の胸のうちは「退社」にほぼ傾いていました。復職すると、どうしても予想されるのがさまざまな要素の発生。少しでも”最短”で回復することを、何よりも優先したかったのです。「では、退社でいきましょう」と、下園先生は即答。もう少し時間をかけてもいいような気もしましたが、迷いはありません。それにもう返事の期限も迫っています。むしろホッとする気持ちもありました。

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