私のうつ最短回復ストーリー
【体験談】My Story
vol.1
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UP

始まりは「え? 今何て言った?」

ことの始まりは、2015年、8月のとある土曜日。久しぶりに学生時代の仲間たちとの飲み会がありました。
私の仕事は、広告記事を中心とした情報紙の編集。2度の転職を経てたどりついた、私なりの天職は、常日ごろ“忙しい”のが当たり前。忙しい日々のなか、気楽な仲間たちと会って話すのは、貴重なストレス解消の時間です。15年目にあたる、この夏は特に忙しくて、なんだか体の芯が重い日々。それを振り切るようにして、飲み会に参加したのでした。

飲み会はいつもどおり楽しかったのですが、私はあることに気付きました。ときどき、みんなの話が聞こえづらいのです。

「え? 今、何て言った?」
何度か私は聞き返していました。

1軒目はにぎやかなトルコ料理店だったのですが、2軒目の静かなバーでも同じこと。

なんか耳の聞こえが悪いかも…。
今思えばそれが「サイン」の一つでした。

なんだか耳がつまった感じ。そう思いながら、そのあとも、私は医者には行かず、出勤を続けていました。 もともと医者や病院が苦手なタイプ。行かなくていい理由があるなら、行かずに済ませたいほうです。
「今、忙しいし」
「夏休み中の編集部員がいるから、その替わりをしなくては」
特に、所属する編集部は、7月から一人、人が減ったばかり。私も周囲も、業務のバランスが変化していました。人員の補充をしてほしいと上司に訴えつつ、その手前もあり、「今はいつも以上に忙しい時なのよ! 休んだり病院に行くヒマなんて、あるわけがないじゃない」とプリプリと考えていました。

今思えば、これもサインの2つ目。もちろん、当時の私はそんなことを知る由もありません。

日を追うごとに、次第にひどくなる耳のつまり。
ついに、さすがの私も我慢しきれなくなり、近所の耳鼻科を受診しました。
8月末のことです。

このクリニックは、娘も保育園のころからお世話になっているところ。女医の先生はてきぱきと診察をし、聴力調査をしてくれました。
「先生、もしかして、耳あかでもつまっているんですかね?」
と聞くと
「いや、特につまっていないですね」
「でも、なんかつまっているんです。聞こえが悪いみたいなんです」
「聴力結果を見ると、たしかに正常より落ちているわね。特に低音が落ちている」
先生は改めて私を見つめて、
「お仕事は忙しいですか? 眠れている?」
「え? 仕事?」
「そう、仕事」
「ちょうど1人減ったところで、すごく忙しいですけど」
「耳の不調は、おそらく仕事のストレスでしょう。疲労が出ているんです。お薬も処方しますから、なるべく静かなところで休んでね」

静かなところで休む? そんなことが出来るわけがない…。
心のうちで思いながら、「仕事のストレス」「疲労」という世間的にはよく聞く言葉を、初めて自分のこととしてインプットしました。

このとき、初めて「導眠剤」も処方されました。
なんといっても病院が嫌いなので、薬もなるべく飲まないでいたいほうです。ものすごく抵抗がありましたが、依存性はないという説明を受けて、おそるおそる就寝前に飲んでみました。

すると、朝までぐっすり眠れたのです。
「そうか。最近、私は眠れていなかったんだ」
そのことに、初めて気づきました。

ふと思い当たることがあります。
このところ、横で寝る夫のいびきで、夜中にたびたび起きていました。
「パパのいびきがひどくなったから、眠れないんだけど!」
と文句をよく言っていたのです。
「夫のいびきがひどくなって眠れない」、それは、夫ではなく私のサインだったのです。

余談ですが、夫のいびきがうるさくて、よく枕をガッと引き抜いたり、枕で夫の顔をたたいたりしていました。そのたびにハッといびきを止める夫。夫もふんだりけったりでした。

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